俳句はレベルが高くなるほど選者の好みが反映され、評価が分かれるものです。今回は風景の描写や抽象化にすぐれた傑作が多く、大変難しい選句となりました。半面、似た意味の言葉を重ねて使う「付き過ぎ」の句もみられました。たとえば「人生」と「歩む」はどちらかだけで十分で、こうした点を注意するだけでも格段に味わいが増します。とはいえ、俳句はだれでもいつでも詠めるのが最大の魅力なのであまり難しく考えず、まずは見たこと感じたことを五七五に詠んでみるのが上達の近道であり、俳句を楽しむ秘訣です。
大賞作は小学生の作品でしたが、大人の作品といわれても不思議に思わない情景描写の妙が高い評価を得ました。
選考委員長 俳句部門選考委員 森村誠一(作家)
足立区立上沼田小学校 鶴谷 優香さん(4年生)
◆ | 一病に 耐えて八十路を 越える春 | 千葉県松戸市 伊藤 和幸さん |
◆ | もやもやを 時の彼方へ 春一番 | 佐賀県唐津市 古賀 由美子さん |
◆ | あと一秒 止まれば事故は 起こらない | 学校法人鶴学園なぎさ公園小学校 橋本 大輝さん(4年生) |
◆ | 一つとて 同じ星無し 冬銀河 | 東京都足立区 長峯 雄平さん |
◆ | 分数で ケーキを分ける クリスマス | ノートルダム学院小学校 竹内 彩華さん(5年生) |
◆ | もう五分 待ってやろうか 花吹雪 | 東京都江東区 鼓吟さん(ペンネーム) |
◆ | 長所のみ 足し算をして 妻へ薔薇 | 北海道札幌市 藤林 正則さん |
◆ | 三角形 辺と辺とが ささえ合う | 文京区立明化小学校 畠山 航太朗さん(3年生) |
◆ | 富士山は 世界に誇る 三角形 | 愛知県名古屋市 室峰 千帆里さん |
◆ | 母と父 一たす一で 私です | 学校法人鶴学園なぎさ公園小学校 君島 実恩さん(3年生) |